RIMG0082 正月休み第4日目はぬけるような晴天であった
 
 であれば 己れがヨットセーリング以外にその日を過ごすことなど考えられない

 東京湾 横浜湾沖の海面は 6~7メートルの風
 うさぎがいっぱい飛んでいる(日曜ヨット乗りの口走りたがる 白波 が多いさま
 水はトーメイ
 ヨットのたてる波は純白だ

 寒風に吹きさらされて 舵輪を持つ手に手袋無しではいられないが 素晴らしいセーリング日和だ

 至福の時間が過ぎてゆく



 天気図には 夜更けには関東地方を通過するであろう弱い低気圧の存在があり ちらりほらりと片積雲が浮かんでいた空には 15時もまわった今 不気味な層積雲が一杯に広がってきている

 映画「インデペンデンス・デイ」の宇宙船のようだ

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 北西の風が上がってくるだろうと心せきながらハーバーへ戻ってきた己れは ここで新年早々大きな教訓をかみしめることになる



 己れのヨットは ハーバー内の狭い水路を一番奥の突き当たりまで北進し そこの狭い水面でヨットを西方向直角に曲げて桟橋に着けるのである

 そこはヨットクラブハウスの真前だ

 風が無ければ スクリューを回して前後進を繰り返し桟橋にぴたりと着け さすが40年のキャリア となる

 南東寄りの風であれば ほっておいてもヨットは桟橋にぴたりと着く 風は吹けば吹くほど良い
 この時も さすが40年のキャリア 風をよく読んでいる となる


 だが冬季は北西の風が吹くのだ

 クラブハウスの真前で行足を止める己れのヨットは この冬の重い北西の風で 桟橋からみるみる流されることになる

 ではどうやって桟橋に己れのヨットを着けるのか

 ヨット乗り必須の ロープ作業という見せ場の登場である

 出港前に計画した手順に従い 桟橋にとりやすい形でセットした2本のもやいロープを ヨットからボートフックを使って拾い上げ まず ヨットの おもて(船首のこと) に舫(もや)い もう一本のロープを持って とも(船尾のこと) に走り そこからロープを引けば ヨットは桟橋にぴたりと着き さすが40年のキャリア と拍手が起こる

 となるはずが 北西の冷たく重い風の吹くこの日 そうはいかなかった

 ヨットの おもて から もやいロープを拾う という 着艇作業の 最初で一番重要な作業に失敗したことから 6トンもの重さの己れのヨットは風で流され始める 

 引け
 戻せ
 ぶつかるぞ
 フェンダー出せ

 などの大声が行き交うどたばた騒ぎとなったのである





 己れはこのヨットを一人で操船することが多い

 ヨットを桟橋に着艇させるための この最初で一番重要な作業 もやいロープを拾い上げること が出来なかった場合に備えた次の手段も 石橋を叩いて渡る慎重居士の己れであれば 当然準備してある

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忍者の秘密兵器をまねてつくった小さな錨



 鉄骨屋さんにつくってもらった 忍者が塀を登る時の秘密兵器(細いロープをつけた小さな錨状の金物) をヨットから桟橋に投げて この錨からのロープを引くことで 風に流されたヨットを桟橋に引き戻し 桟橋に準備してある太いもやいロープを拾い上げる という手段である



 この日 己れのヨットの着艇作業は

 1人が おもて(船首) でもやいロープを拾う

 もう1人は 舵輪とエンジン操作 に取り付いてる

 己れと云えば いつも1人で緊張した作業をしなければならないはずが この日は他に大の男が2人もいる安心感から 何となく着艇作業を任せていたのだろう 己れの気持ちが緩んでいたのだ

 たかが小さなヨットの着艇作業であっても このヨット上での責任をとる者 船長 である己れが 最後の作業まで 気合を入れて指揮するべきであったのだ

 船長は きちんと己れの責任を果たさなければ リーダーの価値は無いのだ

 作業は順調に進むのがあたりまえ 途中でつまずく時 リーダーの 適応性 そしてその責任 はすぐさま現出する

 わずか4人乗船のちっぽけなヨットでも 船長はその時のために存在するのだ

 ヨットが流され始めて 己れが着艇作業全体を見渡す余裕もなく 慌てて出した己れの作業指示は後手後手にまわり 結果はドタバタのみっともない係船作業となってしまったのは すべて 船長としての己れの操船への集中力に欠けていたことが原因であった

 小さなヨットのささやかな作業でも リーダーシップ の 重要性 難易性 は大きな作業の場合と少しも変わらないことを 改めて思い知る


 数ヶ月前 己れの属する ヨットクラブの理事長H氏の 大きな作業 に見せたリーダーシップ から 強烈な刺激を受けたにもかかわらず この日の己れの小さなヨットでのドタバタ作業を 船長として大いに反省する




 己れのなりわい(生業)である 住宅設計 を考える時 出来なかった 知らなかった では 住宅建築家として 己れの責任を果たすことにならないと思い それはヨットの船長の責任と同じであることに気がつく

 住宅工事監理において 住宅建築家としての 信念を持ったリーダーシップをとらなければ 己れの責任を果たすことは出来ないのも ヨット操船の場合と同じだ

 この日のヨットでのドタバタ作業を思い起こし 年の初めに あらためて 己れの住宅建築家としての責任に覚悟を決める正月休みとなった


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