煙い暖炉を設計した建築家は ヘボ建築家と云われてもしかたがないのか?

 

 

暖炉で薪を燃やすのには 住み手は最初の細いたきつけに火をつけ その火を大きな薪に移してゆく そしてその作業を 楽 なものにするために 煙突の入念な設計に 建築家はきちんとその責任を果たさなければならない

 

 

たきつけに火のつき始め 煙突内の冷たい空気は 上昇気流となって昇ろうとする下からのわずかばかりの温かい煙の空気に少しずつ押し上げられ 上に昇るRIMG0040

 そして煙突内が上昇気流の温かい空気で充たされてくれれば あとは火勢の強さに伴ない 煙突内はすべて自分の力で昇る上昇気流となり 快適な暖炉の炎が燃えることとなる

 

 

しかしながら 不注意な あるいは ヘボな 建築家の設計する暖炉では 必ずしもこうなるとは限らない

 

 

燃やし始めの わずかばかりの暖かい煙の空気は 上昇して煙突の中へ入ろうとするが その煙突の中には冷たい空気が詰まっている
 その重い空気を下から少しずつ押して上げて煙突の上端から空中に出してゆくのだが 冷たい空気を下から押し上げる暖かい煙の空気も 冷たい外気に接している煙突の中を少しずつ昇るのにしたがい冷やされて外気温と同じ冷たい空気となり もはや上昇気流ではなくなってしまう


煙突の中の空気が動かなくなってしまうのだ


 この悪循環で たきつけた暖かい煙の空気は煙突の中の冷たい空気を押し上げることが出来ず 出口が無くなり 暖炉の開口から部屋の中へもくもくと出てくることになるのだ

 RIMG0042

 

そして その暖炉を設計した建築家はヘボ建築家という汚名を着せられることになる

 

 

住宅の暖炉の煙突は断熱した二重煙突として しっかり保温する必要があるのだ
 高さの高い煙突の大部分が寒冷の外気にさらされるような外部煙突を設計する場合はなおさらである

 

 

住宅建物内部の暖炉の煙突は 火災を防ぐ防火上の理由で建築基準法に定める断熱仕様で設計することになる
 そして手がさわった時に火傷をしないようにという理由からも断熱は必要になるのだが

 住宅建築家が煙くならない住宅暖炉を設計するためには 断熱二重煙突は煙突内を昇る燃焼空気の保温のためにあるのだ ということを充分に認識していなければならない

 

 

住宅のRIMG0026暖炉から煙が室内に逆流するという あまりかっこ良いとは云えない現象は 現代の密閉された住宅構造からもおこることがある

 

建築家木村俊介設計の暖炉 

 

暖炉のある部屋では わずかな圧力の換気扇でも その存在が 自然対流という小さな力によって暖炉の燃焼空気が煙突を昇り空中へ出てゆく過程に影響を与える


特にキッチンのガスコンロ用大容量換気扇が暖炉と同じ室内にある場合は その影響は重大である


換気扇付近に開閉式給気口が設けられているはずなのだが この給気口を 住み手がきちんと開けることなく換気扇を使用すれば 暖炉から煙が室内に逆流し 建築家は 煙の出る暖炉を設計したヘボ建築家 という汚名を着せられてしまう


この ヘボ建築家よばわり は その部屋にきちんと暖炉用の給気口を設計していた建築家にとっては悲しい冤罪となってしまうのだ

 

 


クルージングヨットには船底にバラストがついている


 風を受け ななめに傾いて帆走る時 ヨットが転覆しないように 船底のフィンキール部分がバラスト(重り)になっているのだ


 このフィンキールバラストは 私の小さなヨットですら優に1トンを超える重さのもので そんな しろもの がヨットの下にぶら下がっている ということを思うだけで 強風時にも安心感を持ってセーリングができるのである


 そして また このバラストになっているフィンキールはクルージングヨットが風上に向かって帆走るためには なくてはならない不可欠のものでもあるのだ


 クルージングヨットは風を受け その風上に向かって45度くらい振れて 帆走る事が出来る


 セールに風を受けて生じる揚力と その揚力によってヨットが流されることから生じるフィンキールの揚力とのバランス を利用することにより 風上に向かって帆走る事が出来るようになるのだ

 

 

 

 

 

住宅暖炉の煙突も そして クルージングヨットのフィンキールも 人間が 自然の力  自然の現象 を相手に それを利用しようと 工夫を重ね生み出してきたものである


 住宅の暖炉で薪を快適に燃やすためになくてはならないものは 優れた性能の煙突の存在であり クルージングヨットが風を受け 風上に向かって帆走る事が出来るための不可欠の存在であるのが フィンキールなのだ


 そして それが不可欠である 訳 を知る事が無くても 楽しい時間を過ごすことが出来るのは 住宅の暖炉も そしてヨットも 同じなのである

 
 又 どちらの場合にも 刻一刻と変化する自然現象の力を利用した 微妙なバランスの上になりたっているこのしくみを使いこなす 腕前 が 上達すればするほど 楽しさも ますます増してゆくのも共通なのだ


 もっともその楽しさを充分味わうためには 腕前 を磨く 年期 が必要になるのも共通なのだが 見果てぬ夢を追う この修業 が楽しいのも 又 同じだ



住宅の暖炉も ヨットも 共に過ごす時間は 生きていることのすばらしさを感じる至福の一刻となるのである




暖炉に関する建築家木村俊介のブログを御覧ください  

 その1 暖炉の中で燃える男と女? ヨットとの関連は?

         
 その2 住宅の暖炉は楽しむまでがむずかしい?ヨットは?

 その4 暖炉の火入式 火の神様を怒らせないように?




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