住宅の暖炉は楽しむまでががむずかしい

 
なぜか


住宅建築家が 暖炉の形を そしてその寸法を よくある 暖炉の設計方法 などの文献データ――暖炉の室内に解放される開口部の面積 それに対応する煙突の断面積 等々――どおりにつくったからといって 薪が明るく素直に燃えてくれて冬の暖かな楽しい時間を過ごせるのかというと 必ずしもそうなるとは限らないからだ

 

暖炉本体の形状 煙突の形状 暖炉のある室内への新鮮空気の入口 そして 現代住宅の標準仕様である密閉された室内 にある換気扇の影響をどうするか そして薪の材質 状態 その燃やしかた ナドナド


 燃えすぎてもいけない 燃えないのでは尚更いけない なによりも暖かくなければ暖炉をつくる意味が無い

 

暖炉を楽しむのには 暖炉で気持ち良く薪を燃やす 腕前 も必要なのだ


とは云うものの 暖炉の火を燃やすのも ヨットのセーリングも その 腕前 の未熟 熟練によらずR0012239
 その楽しさには何の違いも無い


失敗をしながらベテランになって行くのだが その失敗も楽しいのである


 もっともヨットの場合は失敗すれば命にかかわることにもなる 自分の 腕前 の程度を冷静に受けとめながらさらなる領域を求めて 腕前 を磨いてゆくことになる そしてそれも楽しいのだからやめられないのだ

(10Mもの風の緊張する海面で 家族とセーリングを楽しむ)

 

 



そして もちろん 暖炉を楽しむ人が気持ち良く薪を燃やす 腕前 を磨くことが出来るための 燃える暖炉 の設計がなによりも一番重要になることは云うまでもない

 

暖炉の設計は数値を扱う理屈からだけではなかなか出来るものではない 暖炉設計の学習と共に 長い時間を暖炉の炎と共に過ごす経験から養われる感性に その設計の多くを頼ることになる


 ヨットの 風を読む といわれるセーリング技術と同じなのだろう

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 住宅の暖炉の設計は まず その暖炉で燃やす薪の大きさを決めるところから始まる

 暖炉の火だけで暖をとるのであれば 相応の 大きな暖炉 が必要で 薪もおのずと大径のものを燃やすことになる


 快適な暖房設備に加えての 炎を楽しむための暖炉であれば  小さな暖炉 が適当で 薪も小径の小さなものになる


(Mさん宅につくった 小さな暖炉 )

 そして暖炉の大きさが決まり 室内に解放される開口部の面積 それに対応する煙突の断面積を定め スロート スモークチャンバー ダンパーなどを備える暖炉本体を設計する
 建築基準法が定めるスペックも設計条件となる

 そしてそこからが暖炉設計の味のつけどころになるのだ



 私がこれまでに設計した暖炉は50基を超える 

 たった50基 でもあり 50基もの数の暖炉 とも思えるが 暖炉を設計する時には それまでにつくった暖炉の 燃やしてみなければわからなかったさまざまな事柄が 設計する暖炉の 味 を豊かにする調味料になるのだ

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(我が家の暖炉の御紹介) 


 ヨットの設計は造船理論にもとずいて行われるのだが 波と風という自然を相手にしなければならないところは 暖炉の設計と同じように ヨットデザイナーの 経験から磨かれる感性 に負うところが多いと思われる

 

そしてセーリングを楽しむのにも それ相応の 腕前 が必要となるところは 暖炉の火を燃やす 腕前 が上がるとますます暖炉の楽しさが増すところと同じだ

 

ヨットでセーリングするのも 暖炉で薪を燃やすのも それぞれの 道 の 尽きることの無い奥の深さに向かって 己 の 腕前 を磨く楽しい修行だと思っている


 


 住宅設計 暖炉の話 次回その3 は 暖炉設計の 腕前――暖炉のあたたかさのヒミツ 煙突のヒミツなど――についてうんちくをかたむける予定



暖炉に関する建築家木村俊介のブログを御覧ください  

 その1 暖炉の中で燃える男と女? ヨットとの関連は?

         
 その3 住宅の暖炉設計とヨットの設計に不可欠なものの共通点とは?

 その4 暖炉の火入式 火の神様を怒らせないように?





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