暖炉の中の薪は一本だけだと消えてしまう 二本を抱かせると消えないでいつまでも
灰になるまで燃えている
風邪の全快間際で 今年の正月は 大好きなヨットにも行けず 5日間 我家の暖炉の火を 腰を落着かせてたっぷり楽しむ良い機会となった(我が家の御紹介)
暖炉でちょろちょろ赤い炎を出している直径が30センチもあろうかという太い樫の丸太は 6時間以上も燃えているので 外出もままならない
ちょっとの間なら と一軒おいた隣のGさん宅へ 年始の挨拶に行く
Gさん宅 は 私が建築家駆け出しの頃 設計監理をして建てた住宅を 3年前に 同じく私の設計監理で3階建2世帯住宅として建替えたものだ
すすめられるままに上がりこむ
Gさんは 製鉄所高炉の耐火レンガ専門の技術者である 暖炉の薪のもえ方でいろいろわからない事があり 新年の御挨拶もそこそこに 質問責めにしてしまう
暖炉では 新鮮空気を薪のまわりに確保する 燃焼ガスを戸外に導く が重要なのだが 話を聞いてみると 高炉では まずその規模が 暖炉とでは月とスッポン以上の違い まったく参考にならない いつの間にか私には未知の高炉の中の耐火レンガの話を身を乗り出して聞いていて 時間も忘れるありさまとなる
一本だけではやがて消えてしまう薪の火は 二本を抱かせると二本とも灰になるまで消えない
しかしながら 太さにもよるが 10センチも離しておくとやがて消えてしまうのだ
一番 良いのは 1,2センチの間をあけて添わせておくと いつまでも いつまでも 燃えて そして 燃え尽きるのだ
なんと優雅ではないか! 恋人同士 夫婦同士 だ 人間みたいだね
新鮮空気が常に燃焼面にあること そして炎になる温度より下がらないように お互いに熱を与え合っていることが重要なのだろう と 理屈を考えればあたりまえのことなのだが 見た目には もえる薪に人間と同じような意志があるように思えてくる
お互いに 助け がいるのだ 助け合わないと生きていけない 燃える事が出来ない のだ
私はヨットには1人で乗るのが好きだ
いつ頃のことであったか 1人でのんびりセーリングを楽しんでいた時 水平線―といっても東京湾ではいつも陸が見えるのだが―から 黒い積乱雲の絶壁が近づいてくるのに気がついた
風が上がるだろう とメインセールの縮帆と小さなヘッドセールへの交換作業を 鼻歌まじりにしていると 一瞬にして強風が吹き出した
己の完全な油断である
降ろしたセールをしまう余裕も無く あわてて 舵輪にしがみつく
猛烈な寒冷前線の通過だ
始めは陽光がさんさんと降りそそいでいたのだが 母港に逃げ込むまでの小一時間あまりの間に ライフジャケットの下 短パンにTシャツ1枚の我が身は 海水のスプレーをあび通しで 寒さに歯の根もあわないくらいになっていた
舵輪から離れて暖かいカッパをとりに船室へ降りる余裕がまったく無いのだ
桟橋にはハーバーマスターのTさんが 私のヨットのもやい をとろうと心配顔で待っていてくれた
疲れた身に この最後の 一人でやらなければならない緊張する作業 を助けてもらえるのは本当にありがたかった
快適なセーリングをするのには ヨットの上での信頼し合う者同志の共同作業 が必要なのは 暖炉で優雅に燃やす薪の場合 とまったく同じなのだ
1人の力は限られている 私は 謙虚 にならなければいけない
と こういう時はいつも素直な気持ちになっている自分自身に気がつく
だが すばらしい自然の中で 1人 自由な時間を過ごしたい という気持ちは変わることは無い
これだけ自然からいじめられても また 1人で いそいそと セーリングに出かけていくのだ
ヨットをもやい終ると 猛烈にオシッコをしたいのに気がつく
あわててクラブハウスに行き ひょっと見たカガミの中には 土色の頬や黒い眉毛に 真白い塩がいっぱいこびりついている 死人のようなげっそりしたオジサンの顔があった
私のヨットあそび
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その2 住宅の暖炉は楽しむまでがむずかしい?ヨットは?
その3 住宅の暖炉設計とヨットの設計に不可欠なものの共通点とは?
その4 暖炉の火入式 火の神様を怒らせないように?
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