RIMG0115 30年ほど前に私の設計監理でつくったFさんの2世帯住宅リフォームの打合せにFさんのもとを訪れる

 もちろんリフォームをする住宅に現在も住まわれるFさんのもとを訪ねるのだが 訪問先は新築当時のFさん若夫婦の住居部分である

 年代がまわり当時の老夫婦の住居部分を 今度は 今や熟年夫婦となった 新築当時のFさん若夫婦の住まいとするために リフォーム(リニューアル)するのだ

 打合せをしていると この住まいを 30年前Fさんと額を突き合わせて打合せをしながら一生懸命つくった その時を想い出す
 今 打合せをしているFさんの顔がなんとなく亡くなった老Fさんの顔にだぶる

 30年がひと飛びに過ぎるすばらしい一時であった

 これまでの長い年月大切にお住まい頂いたことに大きな喜びを覚える 感謝である


 30年という歳月の間 私の設計のこの住宅建物本体は 立派に役目を果たしているが
 住宅設備技術の進歩 同時に機器類の寿命 インターネット TV 電話などの住宅の弱電設備技術の大変革など
 住宅をリフォーム リニューアル しなければ現代の生活に支障をきたす部分も少なくない

 そして何よりも 同じFさんであっても 老Fさん世帯と若Fさん世帯では異なるであろう そのライフスタイルの違い に対応するためには住まいの リフォーム リニューアル が必要となってくる


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 現在愛用している私のヨットを建造したのはFさんの2世帯住宅新築と丁度同じ30年ほど前である

 ヨットデザイナーと額を突き合わせながら打合せを繰り返し 名人とも云われる1人の船大工が2年余を費やしてようやく完成した私のヨット 
 
進水式に おもて に シャンパンを浴び 大勢のゲストに見守られながら造船所のレールの上を滑り 設計通りの喫水線の位置で海に浮かんだ姿を見て 胸をなでおろしたのを今も思い出す

 そんな手間暇をかけてヨットを造り それを大切に維持してセーリングに愛用しているのも プロダクションヨット全盛の今の時代では珍しい存在になってしまったが それも私のライフスタイルなのだから 私自身は満足感を持って老ヨットに接している

 Fさんの2世帯住宅がリフォームをするように 私のヨットもこの30年間で
 少し出力の大きなエンジンへの交換 という大きなリフォーム
 そして5 6枚あるセールを それぞれ新しくする リフォーム を施してはいるが 他はリギン類の交換
 設備が ロランからGPSに 400メガ無線が携帯電話にかわったこと
 その他 自分で使いやすいように常にいろいろの細工を施していることぐらいでほとんどリフォームすることが無い

 入念に造られたヨットは 荒れた海に叩かれてもミシリとも云わない高い信頼性 を 30年間も保っている

 唯一の苦労はチーク材の塗装である
 船室内は30年前と変わらぬ塗装時と同じ色つやの状態だが外部はそうはいかない
 一人で塗装を剥がし ペーパーをかけ 塗装をし という工程を繰り返していると おもて から とも までゆくのに1年くらいかかる
 これの繰り返しだ

 住宅もヨットも 同じように 自分のライフスタイルに合わせて そしてそのライフスタイルを表現するように 入念に造りあげ それを大切に維持し その 居心地の良さの魅力の虜 になるような存在であってほしいと思う

 そうでなければ己の人生がつまらない人生になってしまうのではないかとさえ思うのだ



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